それじゃあ今回からはロケットエンジンの話をしていこう。
話次回からはロケットエンジンの設計の第一ステップの話をする予定なんだけど、その前にエンジンの推力についてのお話をしていこう。

参考図書


今更だけどこのシリーズの参考図書を紹介しよう。



言わずと知れたバイブル「Rocket Propulsion Elements」の 9th edition だよ。米アマゾンで買ったほうが安いこともあるからそっちもチェックしてみてね。僕は米アマゾンで買ったよ。

HOW to DESIGN, BUILD and TEST SMALL LIQUID-FUEL ROCKET ENGINES

1967年初版の「HOW to DESIGN, BUILD and TEST SMALL LIQUID-FUEL ROCKET ENGINES」
有志によって現在は無料でネットで読めるうえ、米アマゾンなんかで紙の本にもなってる本。pdfとかも普通にあるからググってみよう。

到達目標


今回の記事ではロケットエンジンの2種類の推力と比推力について解説するから、それらについて理解することが目標だよ。
特に難しい数学とかはないはずだから、気楽に読めるんじゃないかな。

推力と燃料の質量流量


そもそも推力ってなんだろう?
推力は英語では thrust っていうんだけど、ロケットエンジンが生み出す力のことだよ。SI単位はニュートン。力だからね。

じゃあ定義がわかったところで、数式であらわしてみよう。
ロケットエンジンは燃料を高速で後ろに投げ捨てることによる反作用で推力を生み出してるんだよね。ってことは運動量保存則を使えば推力が求まるんじゃないかな。
壁に取り付けたロケットエンジンが、Δt 秒間で m kg の燃料を c の速度で噴射しながら、Fの推力を生み出している状態を考えよう。ロケットエンジンは壁に固定されているから、運動量保存則より燃料の運動量はすべて壁に加えられる力積に変わるよね。つまり、
\[ F\Delta t\quad =\quad mc \]
が成り立つよね。ここで 両辺を Δ tでわってを 0 に近づけると、
\[ F\quad =\quad \lim _{ \Delta t\rightarrow 0 }{ \frac { m }{ \Delta t } c } \]ここでロケットエンジンがロケットについてた場合、 m ってロケットの燃料消費量だよね。これの時間微分は単位時間当たりの燃料の質量消費だから、この量を燃料の質量流量と呼ぶことにして、時間微分ってことでmドットで表すことにしよう。すると推力Fは最終的に\[ F\quad =\quad \dot { m } c \]と表せるよね。これがロケットエンジンの推力の式だよ。シンプルでいいね。



例題:一秒間に2600kgの燃料を消費して、2.6km/sの速度で排出するロケットエンジンがある。このエンジンの推力を求めなさい。

質量流量が2600kg/s、c = 2.6km/sなので、F = 2600x2.6x10^3 = 6.8[MN]
アポロ計画に使われたサターンVの一段目にはこのエンジンが5基使われたらしいよ。男のロマンって感じだね。



比推力


さて、突然だけどロケットエンジンの性能を比べたいとしたら、何を比べる?
推力で比べるのはもちろん結構だけど、推力のほかにも効率を比べたいと思わない?
ここでロケットエンジンの効率にあたる一つの指標として、比推力というパラメーターを紹介しよう。

比推力は英語でSpecific impulse っていうんだけど、燃料の単位重量流量あたりの推力 で定義されるよ。なんで質量流量じゃないかは知らない。単位系の関係かもね。
燃料の重量流量はシンプルにmドットと地表における重力加速度の積だよ。
数式であらわすとこうなる。
\[ { I }_{ sp }\quad =\quad \frac { F }{ \dot { w } } \quad =\quad \frac { F }{ \dot { m } { g }_{ 0 } } \]Ispが比推力、wドットは燃料の重量流量、g0は標準重力加速度。
比推力が大きいエンジンほど燃料あたりの推力がでかいってことになるね。

比推力ってホントにこれだけなんだけど、なんか最初はすっごいわかりづらいんだよね。
っていうのも、比推力の単位は秒なんだ。[s] ね。
これをうまく説明するためにwikibediaなんかでは
単位質量の推進剤で単位推力を発生させ続けられる秒数
なんていう説明がされてるんだけど、本質的じゃないし悩むほどのことでもないから無視してもいいと思うよ。

単純に [N]/[kg/s][m/s^2] = [kg m/s^2]/[kg/s][m/s^2] = [s]

ってな具合でたまたま単位が秒になったぐらいの認識でOKだ。
プランク定数の単位が [J s] だからってあんまり気にしなくてもいいじゃん?

それと最後に重要なことなんだけど、実はこの比推力、燃料の組み合わせだけで決まるんだ。(本当は燃焼室圧と温度も決まらないと決まらない)
エンジンの設計段階でまず燃焼室圧を決めるんだけど、この段階で燃料の組み合わせでほぼIspが決まる。
これは後でちゃんと説明するからいまはふ~んぐらいに思ってくれたらいいよ。

有効排気速度


いままでロケットエンジンの推力って燃料の噴射による反作用のみだとして計算してきたよね?
でも実は重要なことを見落としてるんじゃないかな?
Rocket Propulsion Elements の表紙にもなってる、ロケットエンジンの燃料が出てくるベル型の部分のことをノズルっていうんだけど、ノズルの出口と周りの圧力に差があった場合、推力が生じるよね?
例えばノズル出口が150kPaだったとして、大気圧を100kPaとすると、ノズル出口の単位面積あたり50[kN]の推力が生じるよね?
つまりエンジンの推力をF、ノズル出口面積をA2、ノズル出口圧力をp2、燃料噴射速度をv2、周囲の圧力をp3とすると、\[ F\quad =\quad \dot { m } { v }_{ 2 }\quad +\quad \left( { p }_{ 2 }{ -p }_{ 3 } \right) { A }_{ 2 } \]みたいな具合に圧力差による推力の項が入ってくる。
p2はほぼ一定だから、ロケットエンジンの推力は高度によって若干変動してくることになるね。
実は p2=p3 の状態が理想的な状態で、エンジンが動く高度で(一段目なら地表付近、2段目以降なら真空とか)この状態になるようにエンジンを設計しなくちゃいけないんだよね。
これも後々説明するから「ふ~ん」でいいよ。

それでだけど、このままじゃ色々と扱いにくくて不便だから、都合のいいパラメーターを定義しよう。
さっきの推力Fを\[ F\quad =\quad \dot { m } { v }_{ 2 }\quad +\quad \left( { p }_{ 2 }{ -p }_{ 3 } \right) { A }_{ 2 }\\ \quad \quad =\quad \dot { m } c\quad \quad \quad \quad \quad \quad \quad \quad \quad \]と書けるようなパラメーターcを考えよう。
この c のことを有効排気速度っていって、見たまんま、推力がすべて燃料噴射の反作用と仮定したときの燃料の噴射速度のことだよ。
この c を使えば色々と式の見た目が良くなるし便利だからよく使われるよ。
実際この記事で今まで「噴出速度」としてたものは正確には有効排気速度になるよ。
この有効排気速度を使えば推力は推力と燃料の質量流量の項目で示したまんまの式が使えるし、それを使えば比推力は\[ { I }_{ sp }\quad =\quad \frac { c }{ { g }_{ 0 } } \]と表せるよね。

まとめ


・推力は\[ F\quad =\quad \dot { m } c \]と表せて、c を 有効排気速度と呼ぶ。
・比推力は燃料の単位重量流量当たりの推力のこと。
・推力にはホントは燃料噴射の反作用によるもの他に圧力差によるものがある。

次回はロケットエンジン設計の第一段階について解説していくよ。🚀

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