さて、まずはロケットエンジンの話に入る前に🚀ロケットに関する基礎的なお話からしていこう。
車に関して何も知らないでエンジンは作れないのと同じで、肩慣らしも兼ねてまずはロケットについて考えよう。

到達目標


今回の記事ではロケット方程式と呼ばれる以下の方程式
\[ \Delta V\quad =\quad -c\log { MR } \]
を導出して、その意味について理解するのが目標だよ。


第一宇宙速度


突然だけど人工衛星とライフル弾、どっちが早いと思う?
答えはもちろんライフル弾、じゃなくて人工衛星だね。
どうしてかって?だって人工衛星は落ちてこないじゃないか。

地球を、「中心にすべての質量が集中してる質点」だと近似して、地表面で水平方向に物体を初速度V0で投げることを考える。V0が十分に大きい時、物体は地表に落下せずに地表の高さを円運動するよね。人工衛星とかがこの例。V0が十分じゃないと物体は落下するけど、ライフル弾とかはこっちの場合だといえるね。
さて、V0が十分に大きい時、この初速度V0を第一宇宙速度っていうんだ。つまり海抜0mを物体が落下せずに円運動するときの速度を第一宇宙速度と呼ぶんだ。この速度を求めてみよう。

物体が円運動するとき、物体には遠心力が働く(ように見える)よね。この力が重力と釣り合えば物体は落下しないはずだから、この条件から第一宇宙速度v1を求めてみよう。
地球の質量をM、物体の質量をmとして、地球の中心から海抜0mまでの距離をR、万有引力定数をGとすると、万有引力の法則より、物体には
\[ { F }_{ g }=\frac { GMm }{ { R }^{ 2 } } \]の万有引力Fgが働くよね。一方物体は第一宇宙速度v1で円運動してるから、
\[ { F }_{ c }=\frac { m{ { v }_{ 1 } }^{ 2 } }{ { R } } \]の遠心力Fc (centrifugal force)が働くね。
この二つの力が釣り合ってるわけだから、Fg = Fc より、
\[ { v }_{ 1 }=\sqrt { \frac { GM }{ R } }\quad \approx 7.91[km/s] \]

最後の値は各物理定数に実際の値を代入して計算したら得られるよ。

まあここまでの説明は高校物理で習っただろうし、こんな記事を読んでるようなギーク 聡明な読者様が知らないはずもないだろうってことだいぶはしょったけど、肩慣らしってことで。

これで第一宇宙速度が求まったわけだけど、つまりロケットが人工衛星に与えなきゃいけない最終的な速度が求まったんじゃないかな?
人工衛星を地球周回円軌道に投入したいとすると、(人工衛星の軌道高度を無視すると)7.91[km/s]の速度を与えなきゃいけないってわかるね。地球の自転速度を無視すればね。


ΔV


こんな感じでロケットは究極的にはペイロード(人工衛星)に速度を与えるためだけの道具なんだ
つまり、誤解を恐れずに言うと、ロケットの性能の指標の一つとして、「ロケットがペイロードに与えることができる速度増加」というものが考えられる。この速度増加をΔVっていうんだ。

ΔVは車に例えると残りの(i.e.今ある燃料での)走行可能距離。宇宙では今の速度にこれだけ速度を追加して、新しい軌道なりに投入するということをやるから、あとどれだけ速度を変更できるかっていうのがとても大事で、これがΔVなんだよね。

例としてはさっきやった人工衛星の打ち上げ。第一宇宙速度が 7.91km/s だから、ロケットにはそれ以上のΔVが要求されるよね。
なにもサターンV🚀とかソユーズ🚀みたいな ”ロケット”🚀🚀🚀🚀🚀 に限定して考えなくても、例えば小惑星探査機はやぶさだってエンジンと燃料を積んでたわけで、はやぶさのΔVだって考えることができる。
イトカワに接近するコースに軌道を修正するために例えば2.5m/sの速度変更が必要になったら、2.5m/sのΔVを与えてやればいい。

ところで車の走行可能距離って、ガソリンの量で決まるよね。同じ感じではやぶさのΔVだって、燃料の量で決まりそうじゃない?
実際に求めてみよう。


ロケット方程式


さて、ロケットのΔVを求める前に、もうちょっとちゃんとΔVを定義しなおそう。
問題を単純化するために、ロケットには推進力は一切働かないとしよう。
この状態でロケットエンジンの推進力を一定に保つ。この条件でエンジンをΔtの間動かしたときの速度増加をΔVだと定義しなおそう。

さて、ΔVを再定義したところでこれを求めてみよう。

deltaV



上の画像のような状況を考える。質量Mのロケットが-dMの燃料を相対速度cで噴射して、速度がdV、
質量がdM増えるような状況だね。もちろんロケットの質量は減少するからdMは負だね。
数学では増加を正でとるから、ここではそれに従うよ。
時間tの関数として、ロケットの質量をm、ロケットの速度をvとすると、運動量保存則より、
\[ vm\quad =\quad \left( v+dv \right) \left( m+dm \right) -\left( v+dv-c \right) dm \]\[ cdm\quad +\quad mdv\quad =\quad 0 \]\[ dv\quad =\quad -\frac { c }{ m } dm \]
これを速度がVからV+ΔVに変化するとき、質量がMiからMfに変化したとして積分すると、
\[ \int _{ V }^{ V+\Delta V }{ dv } \quad =\quad -\int _{ { M }_{ i } }^{ { M }_{ f } }{ \frac { c }{ m } dm } \]\[ \Delta V\quad =\quad -c\log { \frac { { M }_{ f } }{ { M }_{ i } } }\]ここでログの中身Mf/MiをMRとすると、最初に出てきた方程式
\[ \Delta V\quad =\quad -c\log { MR } \]
が得られるね。ちなみにMRのことを質量比と呼ぶよ。
これでΔVの式が求まったね。この式をロケット方程式とかツィオルコフスキーの公式とかいうんだ。


ちょっと雑談


ロケット方程式って対数法則を使って、こう書き換えることができるよね。\[ \Delta V\quad =\quad c\log { \frac { { M }_{ i } }{ { M }_{ f } } }\]
はやぶさの残りΔVの話に戻ろう。積分するときに、m が Mi から Mf に変化するとして計算したから、はやぶさの残りの燃料は Mi - Mf であらわされるよね。ということはやっぱりはやぶさの残りのΔVは残りの燃料から求まることがわかったね。

ここで人工衛星打ち上げ用のロケットについて考えよう。Mf ってロケット本体の質量とペイロードの質量の和になるよね。
ペイロードの質量は減らせないし、現実的にロケットの質量を減らすのも限界があるから、ΔVを増やそうと思うとロケット方程式より c を増やすか Mi を増やすしかないよね。
でもちょっと問題があって、c は有効排気速度っていって、のちのちやるけど燃料の組み合わせとか燃焼室圧とか現実的な理由で数km/s程度が限界なんだよね。
で、残るは Mi を増やす、すなわち燃料を増やすしかないんだけど、これをみてほしい。
ΔVの式もわかったわけだから、グラフにしてみた。横軸が燃料、縦軸がΔV。
deltaVgraph

グラフの概形がわかればいいから、値は適当に設定した。
グラフの形を見ると、xが増えれば増えるほど、yが増えにくくなっていってるよね。
つまり、燃料をある程度積んだら、それ以上燃料を積んでもあまりΔVは増えなくなるんだ。

こういう理由から、ΔV > 7.91km/s は現実的には無理なんだ。一段だけでならね。
ロケットが多段式なのはこのせいで、途中でいらない質量を切り捨ててMRを頑張って下げてるんだ。
そこまでやってようやく7.91km/sに到達するのが見えてくる。
実際には空気抵抗とか重力とか、もろもろの損失が加わるから、人工衛星を打ち上げるならもっとΔVが必要になる。

地球は大気の密度も天体の密度も無駄に高くて、おかげで生命が誕生する要因になったらしいけど、脱出しようとすると持ちうるすべての力で激しく抵抗してくる。でも自転方向に飛び出せばちょっとだけ手伝ってもくれる。地球ってツンデレなんだね。

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